最近はセシリアにとってついている事が続いていた、特に守護騎士団団長のアレックスが隣国への任務で 留守にしているここ数ヶ月は心が実に平穏だった。 アイラ団長から笑顔が無くなっているのが少し気にはなったが、影のある表情も見ていてうっとりとするので それはそれで悪くないと思っていた。それに笑顔が無くなっているのは他の近衛騎士団も同様であった、 確かに王妃と王子が亡くなったのだから国中が喪に服しているのは仕方がない、しかし里帰りしている時に 流行病にかかってしまったのであれば誰のせいでもないのだからあまり沈んでいるのも良くないとセシリアは 考えていた。 それよりもあまり他人に感心を示さないアイラ団長がアレックスだけは気にかけている事の方が深刻な問題だった。 只でさえ目障りだったのに団長になってからは一層近くにいる時間が増えていてセシリアにとっては アレックスの存在は目の上のたんこぶであった。 しかしアイラと立場が近くなればそれだけ一緒にいることが出来るという事に気が付くことが出来たので その事だけはアレックスに感謝をしていた。 副団長になればいい!答えは単純だった、しかしエリートで構成される約300名いる近衛騎士団の中で 自分の隊の副隊長になりさらに隊長、その先に副団長と道のりは思うほど単純ではなかった。 そんな遠い道のりを若くして団長にまで上り詰めているアイラはやはり憧れの存在であると再確認すると共に 自分と大して年齢の変わらない歳で守護騎士団団長になっているアレックスには納得がいかなかった。 普通に任務に励んでいても最低10年以上かかるであろう道のりを短縮するには手柄が必要だったが 近衛騎士団は基本的に王城での任務や王族の守護が主任務の為、目立った手柄を立てる事は難しかった。 そんな中でセシリアの耳に届く情報があった。 「他国へ侵攻する為の先発隊!?」 王国騎士団とは別に新たに編成した部隊を率いて侵攻すると言う話だが、まだ指揮官が決まっていないらしい。 たしかに王国騎士団の主力はここ数年遠征をしており王都には不在だった。 エレノアとかいう最近王城で偉そうにしている錬金術師も暫く前から姿を見ていなかった。 指揮官になれば手柄を立てる事が出来ると思い志願することを考えたが普通に申請しても近衛騎士団で、 さらにただの平隊員では却下されるだろう。一計を案じ既に引退したが王城に影響力のある祖父から口添えを してもらう事にした。反対はされるだろうが自分の「お願い」が断られた事はないのでたぶん大丈夫であろう。 「(最近は本当についている)」 そう思うや否や数ヶ月ぶりとなる実家へと走り去っていった。